さびチェンジ の有効性

平成24年 8月27日
アルファペイント株式会社
  1. 金属腐食の要因等
    金など一部の例外はあるものの、自然界において金属が単体で存在することは稀である。多く
    の場合、酸化物や塩化物などの化合物の状態で存在する。鉄の原料である鉄鉱石は、自然界にお
    いては、主として鉄と酸素からなる安定した酸化物として産出される。この鉄鉱石から酸素を分
    離し精錬された鉄は、温度、湿度等の環境の影響を受けやすく、安定した元の酸化物に戻ろうと
    し、この酸化物が錆と言われる物である。
    しかし、鉄を自然界に放置すれば必ず錆びるというものではなく、錆びるには空気(酸素)と
    水の両方が存在することが必要である。ちなみに鉄片を「乾いた空気中」や「あらかじめよく煮
    沸させて水中の酸素を追い出した純水中」に浸しても、鉄片は光沢が保たれ錆びないことが認め
    られる。
  2. 金属腐食のメカニズム等
    鉄は水に接するとイオン化し、水に溶け込もうとする。この時、金属中に電子が取り残され、
    この電子が取り除かれれば、前述の反応は進行する。自然界においては、この電子は溶存酸素に
    よって取り除かれ、水酸化イオンに変化する反応が起きている。この水酸化イオンは鉄イオンと
    反応して水酸化第一鉄の白濁物となり、さらに酸化され水酸化第二鉄の赤褐色の沈殿となる。
    この沈殿はコロイド状粒子の集合体をなし、いわゆる赤錆と呼ばれている状態となる。赤錆は
    衝撃や摩擦等で簡単に剥げ落ちてしまい、水にも溶けやすいため、再びその部分に新たな水酸化
    イオンが生成され、これを繰り返すことで鉄は次第に消耗される。このように赤錆は鉄の表面に
    密着することはなく、鉄表面を保護する効果(力)がないために、新しい鉄の表面は、継続して、
    このような酸素と水との反応を繰り返すこととなる。すべての鉄が錆びるまで、或いは、酸素と
    水が存在する限り錆は進行することになる。
  3. 金属腐食のメカニズム等−A
    自然界に存在する金属の大部分は、酸化物超薄膜といわれる酸化皮膜に覆われている。この酸
    化皮膜は金属の種類によって、次の三種類の化合物に変質する。
    第一は、前述の赤錆のように進行性のある、内部腐食に至る錆の例である。
    第二は、化成皮膜と呼ばれる塩基性の錆で、銅や亜鉛、ニッケルなどに生成される。銅の錆と
    して緑青などはこれに分類される。
    第三は、水酸化物を含んだ不動態皮膜と呼ばれるもので、ステンレスやチタン、アルミニウム
    などの金属表面に生成される。これらの金属は、このような酸化超薄膜に覆われることで内部が
    保護されるために内部への腐食の進行がくい止められる。また、不動態皮膜はアルカリ雰囲気中
    の炭素鋼にも生成される。コンクリートの中で鉄筋が錆びにくいのはこのためである。イオン化
    傾向からすると、チタンやアルミニウムは鉄に比べ活性であり、はるかに錆びやすいはずなのだ
    が、常温の大気中では、錆(酸化皮膜)によって保護されるために、錆が内部に進行しにくい、
    錆が発生しにくいということになる。
  4. 防錆塗料の変遷―古典的な防錆顔料を含有する防錆塗料
    防錆塗料が錆を防ぐ仕組みは大きく分けて2つある。ひとつは塗料の顔料として防錆効果を期
    待できる物質を含有するもの、もうひとつは水や酸素を強い塗膜によって遮断することを主眼と
    したものである。
    塗料は主に顔料、展色剤、溶剤で構成されている。古典的な防錆塗料では、この顔料に防錆効
    果を持った物質を使用することで、塗料に防錆効果を持たせている。防錆顔料のうち、アルカリ
    性の塗膜を形成することで、腐食反応を止める働きを持つのが、一般に鉛系塗料といわれる防錆
    塗料である。顔料としては、鉛丹(pH8.3)を使用する。鉛丹は英語にするとRedRea
    dつまり光明丹である。鉛系防錆塗料は鉄鋼などに塗布される赤錆色の防錆塗料として普及した。
    ただし、同じ赤錆色の塗料でもベンガラを顔料としたものもあり、こちらは酸性塗料である。
    ベンガラは対紫外線性に優れ、これによって樹脂を保護することで塗膜の性能をあげている。
  5. 防錆塗料の変遷―鉄の犠牲となる犠牲陽極タイプ
    亜鉛めっき鋼材や亜鉛めっき鋼板(トタン板)や亜鉛粉末を含有した顔料を使用した防錆塗料
    がこのタイプである。鉄よりもイオン化傾向の大きな亜鉛を使用することで、亜鉛が先に陽極化
    し、鉄が腐食するのを電気的に食い止めようとする仕組みである。亜鉛が鉄の身代わりになるこ
    とから、犠牲陽極とも言われる。この防錆塗料は海洋などの厳しい環境下でも優れていることか
    ら、橋梁などの重防食塗料の下塗り塗料として普及した。
    このタイプでは、亜鉛粉末を使って電気的に防錆するものなので、鉄と亜鉛が密着して電気的
    に導通していることが、防錆効果を発揮するためのポイントとなる。リン酸塩皮膜も不良導体で
    あり、これによる下地処理後の中塗りとして使用しても効果が期待できない。ブラスト又はペー
    パーなどによる下地調整、サビ落しをしたあとで、直接鉄の表面に付着させる形で施工する必要
    がある。また、すでに錆の発生している表面に対しては、あまり効果を期待できない。
  6. 防錆塗料の変遷―人工的な化成皮膜を形成する防錆塗料
    3項の第二のように、金属の表面に人工的に錆を形成させて、それによって防錆効果を期待す
    るという考え方がある。リン酸を主体とする溶剤や有機溶剤、界面活性剤などからなる防錆塗料
    がある。リン酸は鉄と反応してリン酸第二鉄の皮膜を形成する。この皮膜は水に溶けないので、
    処理後水洗いが可能であり、洗浄後空気や湿気にさらされても錆が発生しにくくなる。
    ところで、鉄が酸と反応するときに水素を発生する。この際発生した水素が鉄に吸収されると
    水素脆性と言う現象を引き起こす。鉄の組織内に原子状水素を取り込むことにより、鉄が脆くな
    ってしまう。この現象は強度を必要とする高張力鋼や炭素鋼ほど起こりやすいので注意を要する。
  7. 防錆塗料の変遷―最新の技術、錆転換剤による防錆塗料(さびチェンジ)
    3項の第一のような赤錆を3項の第三のような酸化超薄膜に転換して防錆効果を発揮するとい
    う考え方から生まれた最新技術に基づく防錆塗料である。
    近代の高炉製鉄に多く利用される鉄鉱石は赤鉄鉱石や褐鉄鉱石であり、赤錆と同様の性質を有
    する原料である。(赤錆と同じ分子構造を有する。)一方で、古代の鉄器時代以降の製鉄に利用さ
    れた鉄鉱石は磁鉄鉱石(これの粒状化したものが砂鉄)であり、海岸線などの砂に含有される例
    が多い。砂鉄は、電解質の多い海岸線においても、水に溶けることなく、かつ変質することなく、
    極めて安定した状態を維持している。(一般的に黒錆と呼ばれる。)
    このように、黒錆は水溶化しない性質と鉄の表面に密着して、鉄表面を保護する効果(力)が
    大きいために、チタンやアルミニウムなどと同様に、黒錆(酸化皮膜)によって保護されて、錆
    が内部に進行しにくい、錆が発生しにくいということになる。
    一般に、サビ転換剤の方が樹脂成分を含有する分、リン酸系化成皮膜に比べて、そのまま放置
    した場合でも、錆の発生はしにくい。しかし、これらの場合であっても、上塗りした方が防錆効
    果を大きく期待できるため、標準塗装仕様では上塗りを指定している。
    ただし、上塗り塗料の付着性に関しては、サビ転換剤の表面は樹脂コーティングのために平滑
    であり、リン酸系化成皮膜が発生する水素ガスによるエッチィング効果があるのに比べ、劣って
    いるといわれる。
  8. さびチェンジの有効性
    海上自衛隊艦船においては、従来からブラストやサンダーなどを使用して下地調整後、鉛丹系
    防錆塗料を塗装したうえで、フタル酸系塗料を上塗りしている。甲板上の赤錆は完全には除去で
    きないために、1年経過時点においては、赤錆色に変色する部分が散見された。しかしながら、
    さびチェンジを防錆塗料として試行した部分においては、赤錆色に変色する部分は皆無であり、
    さびチェンジは防錆塗料として極めて有効であるものと思料される。
    また、同じく海上自衛隊において、海岸線に隣接するカラートタン屋根に対して遮熱塗料を塗
    装する際の下地処理に、さびチェンジを使用した実績がある。点蝕のような赤錆をケレンするこ
    とが困難な状況において、高価な遮熱塗料を塗装しても、内部からの塗膜破壊(損傷)があれば、
    遮熱塗料の効果が発揮できなくなる可能性が懸念されたために、海上自衛隊側からの要求に基づ
    き施工された。
製造発売元:アルファーペイント  

セレクトコートインデッククス